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僕は毎日往診に出かけます。午前中の診療を終えると昼飯も食わず、相棒の黒い大きい革の往診鞄を携えて、よし、出発!雨の日も風の日も、こいつと一緒に平均4〜5軒の患者さん宅を訪問します。患者さん達はご高齢で通院が困難になってしまった、いわゆる在宅療養をされている方がほとんど。少しでも長く、快適にご自宅での療養を続けられるように微力ながらそのお手伝いをしています。
皆さん僕が来るのを心待ちにしていてくださいますので、一回一回の往診は真剣勝 負です。在宅療養をされている患者さんはとてもデリケートで、病気への抵抗力も弱っています。ですから細心の注意を払い、わずかな異変をも素早く察知して適切に対処し、大事に至らないようにしなければなりません。一見のどかに見える往診風景かも知れませんが、その裏は手に汗握るスリル満点の世界なのです。今まで沢山の往診の患者さん達と出会い、そして残念ながら沢山の患者さん達との悲しい別れも経験してきました。
さて、往診鞄には薬品類、聴診器や血圧計などの診療器具が入っていますが、もし急に患者さんから往診を依頼された時、この鞄一つ持って飛んで行けばなんとかなる、なかなかの優れた内容になっていると自負しています。でもこの鞄には何より、数え切れない患者さん達との往診での思い出が詰まっています。長年の酷使によりボロボロの鞄ですが、お金では買うことの出来ない愛着のある大切な鞄です。
僕は長年往診をしてきて、これからも体力が尽きるまで往診を続けていくつもりです。今では町中にお伺いした事のあるお宅がそこここに沢山あり、ちょっとした町の物知りかも知れません。毎日、昼休みの大半の時間を割いて、一軒一軒患者さんのお宅を回るのは本当に骨の折れる事です。しかし、通院出来ない患者さんやそのご家族が安心して療養、介護をしていただけるように往診をこまめに重ねていくことは、町医者だからこそ出来る大切な仕事の一つだと思うのです。
僕のコラムはこれで最終回となりますが、町医者を少しでも身近に感じて頂けましたら幸いであります。
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●プロフィール
藤野 遵(ふじの じゅん)
内科医。ロックバンドJAM-TAKOを率いるチャリティ活動家でもある46歳
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