Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)の頭文字をとったTPOと言うフレーズを知っている方は多いかと思います。「時間や場所、機会にふさわしい装いを」ということで、なかなか大切な事だと思います。さて、では医者のTPOとは?それが今回お話したいことで、医者の正しい服装とは何か?と言う所であります。

 一般的に考えられる医者の正しい服装とは、患者さんに失礼がなく信頼されるような、清潔な身だしなみの整った服装だと思います。僕は診療の時、ネクタイをするようにしています。僕がネクタイ派になったのは、最愛の母が癌で亡くなったのがきっかけでした。

 母が入院し、担当になった外科研修医は悪い性格の持ち主ではありませんでしたが、家族の側からは、彼のラフな服装や話し方が、ぞんざいな印象を強めました。気さくな性格の母は「あの若い先生おもしろいのよ」などと言って何も気にしていませんでしたし、それまでの自分だって身なりなど気にせず医者の仕事をしていました。しかし、患者の家族になった途端、自分を棚に上げて服装も含め母担当の外科研修医を許容できなくなったのです。

 ところが、外科の教授は紳士でありました。いつも母の病室を訪れる時はきちんとネクタイを結び、清潔な白衣を着て丁寧に母に接してくれました。母がこの教授の診察を受ける時は神聖な儀式のようで、深い悲しみの中、唯一心がホッとする時だったのです。そして「ああ、医者ってこういうのが良いのだな」としみじみ思ったのです。

 この辛い体験を通して、僕の中で医者の正装は「ネクタイ」と決まりました。そして、それを機に言葉づかいや態度にも細心の注意を払うようになり、患者さんに安心してもらえるよう心がけています。もちろんネクタイをしただけで良い医者になれる訳ではありません。中身が最も大切です。21世紀の町医者として中身の研鑽の方も日々がんばっています。

 こんな事を書きましたが、暑い日本の夏の最中、当院でも時流に乗りクールビズを取り入れておりますので悪しからず。

 次回は「続・心を育む〜子どもたちへ」です。

●プロフィール
藤野 遵(ふじの じゅん)
内科医。ロックバンドJAM-TAKOを率いるチャリティ活動家でもある46歳
JAM-TAKOのセカンドCD「CALLING」が完成。田無バンダレコードにて好評発売中!

イラスト/中村知史

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