世の中、不景気雲が立ちこめて、不透明感がただよい拭い切れていない。そのうえ冷夏ときて冷えびえとして雨ばかり、余計うっとうしくなってしまった。うっとうしいは漢字で鬱陶しいと書くが、鬱の字が簡単に書けるようになったのはおぞましい。ある大衆作家が銀座のクラブで「鬱」の字をいとも簡単に書いて大もてしたそうだが、いまでは誰でもが鬱の字が書けてかえって貧乏神視されているのではないか▼不景気でうっとうしくなると鬱々とその貧乏神的存在を見つけて攻撃の矢面に立たせてうっ憤を晴らそうとするのが人情。その矢面に立たされているのが竹中平蔵なる御仁であろう。幼児的な面相のうえにいかにもワケ知りな言動はいじめの対象にうってつけの印象。そのうえ不景気という社会現象が重なるから罵倒の対象となるのは致し方もない。大臣たるもの国民から選ばれた良識ある人間、すなわち選良がなってはじめてその重い役職に耐え、まかり間違えば次の選挙で失権し只の人となるのが政治の世界のオキテなのに、たかが経済学者なるものがその任についておれば、このご時世無責任の張りぼてのように見えて、ぼこぼこに叩きたくなるのも人情というものだ。もうこの場合、その政策が後世においてどう評価されようとされまいと今が不満であるのだから、同情のはさむ余地もなし、いかんともしがたい。これぐらいなら俺だってできるわいと自負している老人諸君も多いのではないか▼ここで思い切った世直し改善施策を実施しないと、先のない老人たちが叛乱一揆を起こしかねない状勢である。20世紀のはじめに生を受け、小さい頃から富国富民の声に駆りたてられ、敗戦の混乱を乗り越えて国威高揚に努め、世界屈指の富裕国家にしたと思った矢先のこの不況である。その政治経済をつかさどる人間といえば、その国威の構築に汗水を流した世代の努力をのほほんと享受してきた連中ばかり。その国家の富をいい加減に消耗させて国の体力が衰えれば、これまでの諸般の構造がゆがんだ結果で、それゆえに構造改革だといいながら一向にその方策さえあまり具体化しない。暗中模索のありさまである。もっとも老人連中にさてどうするかと言われても良き施策も思い浮かばない難題ではあるが▼60年代から国策として発行してきた国債もいまでは約700兆円、よくも性懲りもなく発行してきたものであるが、この際財政再建なる念仏は棚に上げてもう100兆円ほど国債を発行してはどうか。それを社会のインフラなどに使うことなく国民全員に分配してしまうのだ。いや、子供や学生への分配は止めよう。これまでわが国の繁栄に努力してきた人、50歳以上か60歳以上に無償で差し上げるのである。ボーナスだ「ご苦労さまでした」と感謝と敬意を表するのである。いや、ここは65歳以上位に年齢を制限した方がよさそうだ。敬老金である。行く末はあまり長くないようだから、思う存分これまでの苦労を忘れて楽しんでくださいと差し上げるのだ。生甲斐奨励金である。老人は思いっ切り金を使うから、その経済効果は地獄を見るほどの大きさが生まれることであろう。


共同企画 後藤喜好