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一年は365日、これを短いと取るか長いと取るか人それぞれである。社会的な立場、会社の地位、年齢などにより受け止め方はいろいろであろうが、365日もあると思うのと、365日しかないと思い込むのとでは人生の処方箋に大きな隔たりが生まれる。最初のちょっとした感覚のずれがしだいに広がり、心象的には現実とバーチャル(仮想)との隔たりに匹敵するギャップを生む▼まず365日もあると思うと心に余裕が生まれ、卑近なたとえで恐縮だが、365日もうまい酒が飲めうまい肴が食べられると涎が出そうな嬉しさがじわーと拡がってくる。それにまつわる楽しい会話、笑い声、華やいだ雰囲気となんともいえない幸福感が身をつつみ込む。朝起きてゆっくりと風呂で垢を落としひげを剃り、湯上がりに冷たい水を飲み、熱い味噌汁と塩鮭の香ばしさと浅漬の味わいでご飯をいただく。これが365日つづけられる。昼はなにを食べようか、軽く日本そばと行くか、余り腹にもたれると夕べの酒が少しばかりまずくなりそうだし。あそこの魚辰さん、今日あたり取り立てのアジが入っていたりしてアジの叩きを見つくろっていただくかーと朝からうきうき、仕事も行動も心躍る一日となるのである。これが365日、こんな素晴らしい人生がそんじょそこらに転がっているのだ▼それに反し365日しかないと周章てている御仁にはまず朝風呂に入る心の余裕はない。味噌汁の湯気の向こうの白いご飯など思い浮かべることさえも煩わしく、朝飯抜きは常識で、パン一切れを囓るのが精一杯と走り出す。なんでそんなに急ぐのかと言われても”?“と怪訝な顔で”これからはITの時代や、5年10年先を見ていなければ世間で、いや世界で生き残れない時代なんやで、朝飯なんて悠長な事言うてる場合やない。朝飯一食分の固形物があれば十分や、それを一個ダーッと飲むだけでエエという文明が早う来んかいな“と言う体たらく。もちろん、晩酌など酒と肴を一緒くたにした固形物一個あれば十分との進歩的認識があるから味覚も嗅覚も触覚さえもがバーチャルの世界に入っている▼IT革命なる新語がひとり歩きをはじめITを知らぬ者人にあらずの風潮が蔓延している。しからばIT革命とは何なんだと問えば、具体的な成果を説明できる信奉者は何人いるのか疑問に思えるのも事実。ITのマーケティングは、生産性は、何を製造するのかと疑えば、ITとは唯利便性と効率化を推進する道具にしか過ぎない。何かを創造しようとしても唯虚空に手を差し出して模索しているのが現状。バーチャルな世界を求め、一粒の宇宙食と宇宙船のような空間を住処とするか、そこには耐え難い孤独しか存在しまい。日本古来の美意識と人情を是とするか、365日に対する認識の違いが大きな乖離を生むことは確かなようである。あなたはどちらを選びますか?
共同企画 後藤喜好
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