|
これは私の体験で、みなさんには他人ごと。ただ、念のため記憶の片隅にとどめてほしい一件でもある。 一月二十九日土曜日、夕刻突然に右目がシャッターを降ろしたように真暗になった。あとで判ったことだが、目に血液を送る血管がつまり黄斑とか網膜とかいうところに血液が流れなくなって起きた症状であった。
よく夜に起こるという。
この症状が発症し、そのまま放置しておけば三日後には完全に失明するという。目の中枢部の細胞が完全に死ぬからである。
ではどうすればいいか。
一刻も早く救急車で病院に搬送してもらい、血栓をとかす点滴と血管を拡張する点滴を打ってもらうこと。そうすればほとんど元の状態にもどる! という。
応急的な処置として目玉を強く押したりすると
一時回復することもあるそうだが、これは例外、まず救急車を呼ぶ。
私の場合、まちの眼科医院に電話したが、土曜日の夕刻、ほとんど帰ったあとで、電話は呼び出し音だけが鳴っている。近くの病院まで片目のまま歩いて行ったが、ここも眼科医さんは帰ったあと。若い当直の先生が主な病院の電話番号を紙に書いて教えてくれたが眼科医さんの居る病院はなかった。土曜日の夕刻という不運が重なった。最後に教えてもらった多摩救急センター、局番と電話番号はいまでも憶えているが、ここの応対がまた面倒臭そうであった。それでも最後に八王子の方の病院の電話番号を教えてくれたものの、やはり専門の眼科医は不在でアウト。
ここでトボトボと家路へと辿る。日曜日もまたそのまま無為に過して月曜日、総合病院の眼科へ。眼科医さんと看護婦さんが方々手を尽して大学病院に紹介状を書いてくれてそのまま入院。そこで教えられたのが三日で目の細胞が死ぬというその目の症状の重篤さであった。
いま、右目は土・日の無治療のため二日分だけ見えなくなって暗闇のようになっている。治療(点滴)を受けた一日分だけかすかに明りをもたらしている。三日たったら失明するという主治医の言葉は真実であろう。ちょっとやばい疾患だなと気付きながらも、強引に救急車を呼ぶ押しもなく独眼流となってしまった現在、急病の場合、やはり遠慮しないで救急車を呼ぶ度胸も必要と実感している。
それにしても眼科病棟の賑やかなこと。片目に眼帯のおばあさんたちが廊下をかっ歩していて、相部屋の病室からは絶えず笑声がひびいてくる。入口の扉を閉めてはいかがとも思うのだが、それでは不満なのであろう。まるで湯治場のようである。命に支障がないからとはいえ、お産などを経験しているからか女は強い。この欄、いささか陰気くさくなったけれど、これからの独眼流の天井桟敷もよろしく。なお、道などですれ違うとき瞬時の判断が遅れて失礼するかもしれないのでお許しを。
|