(10)あの鉄塔を目指して 保谷駅北口周辺
糸を吐き出す蜘蛛のようにも見える武蔵野変電所の鉄塔。見ようによっては不気味だ。
 ’94年度「日本ファンタジーノベル大賞」を受賞した『鉄塔 武蔵野線』(銀林みのる著、新潮社刊)という小説がある。「鉄塔文学」という新ジャンルを提唱した秀作だ。作中「櫛流変電所81号鉄塔」のモデルは、まさに東京電力武蔵野変電所の鉄塔のこと。今回は、少年時代に戻ったつもりで鉄塔を目指す。

 西武池袋線保谷駅の北口に下りる。改装工事も終了し、真新しい駅舎と整備されたロータリーが眩しい。北の方角へ歩くと、左手にはあらやしき公園。ここから細い道を進むと、左手に福泉寺が見える。対面の右手には下保谷森林公園の緑。したみち通りを左に。保谷梨の小美戸農園を過ぎるころになると、だいぶ畑が多くなる。道幅は狭いが、はなバス北路線のルートとなっており、利用者も多い。やがて、畑の先に鉄塔が。手前には北町緑地保全地域。雑木林が手つかずに残されている。道路を挟んだ反対側が、春になると満開の桜が楽しめる穴場スポットの武蔵野変電所だ。

 住宅地に忽然と姿を現す異形の鉄塔たち。「昆虫のようでもあり、手足がごちゃごちゃになった機械のようでもあり」(「鉄塔 武蔵野線」より)、その姿は、何かしら人を惹きつける。

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